子供のころにどんな音楽を聴いていたかで、その後に聴ける音楽の幅広さが決まるという説がある。この説が完全に正しいという訳ではなさそうだが、完全に間違っている訳でもなさそうだ、と思わせるのがアイツの音楽遍歴である。
以下、本人から聞き取りをして、現在に至るまでにどのような音楽を聴いてきたのかを書き出してみた。
アニメで知ったのをきっかけに、小遣いを握りしめて音源を少しずつ買いに走るようになる。
椎名林檎やBlanky Jet Cityを聴くようになる。本人曰く、ここが分水嶺。
J–Rockは今でも聴いており、そこそこ開拓している様子である。
かなりの強豪校で、3年のコンクールで東日本大会(小編成では全国大会なみ)まで行ったようだ。ついでに吹連主催でない謎のコンクールでは全国一位を取っている。クラシックには余り興味がなかったが、行進曲が特に好きだったという。
本人曰く、「ボカロ厨」。一時期はアップロードされたボカロ曲全部をチェックしていたという。
「よく藤井風を聴けるまで更生したもんだ」とは本人の弁。
「何も考えなくて済む音楽を流して」と言われたので、何も考えなくて済むFive Horse Johnsonの青ジャケを流したら刺さったらしい。
その前にいくつか段階を踏みたかったのに……。
遊びに来ていた時にネタでMerzbowを聴かせたら「格好いい」とか言い出す。
何でノイズが聴けるようになったのか考えたところ、オーディオ環境的に、アイツの数千円のイヤホンより私の家にある設備が良く、音の解像度が高かったからでは?という説が浮上する。試しに手元にあるイヤホンやヘッドホンを片っ端から試し聴きさせた結果、脳を焼いてしまう。
本人は激怒し、土下座による謝罪および民事訴訟を考えるとか言い出したので、一番いいヘッドホンを譲渡して何とかなだめた。
良かったらしい。しかし前後の流れ的にすっ飛びすぎていないか?
Merzbowの爆音ライブが気に入ったようなので、「今度は本物のヘヴィ・ロックを聴かせてやる」と言ってFuneral Moth(日本の極端に遅くて重いバンド)とConan(イギリスでヘヴィなロックをやっているバンド)のライブに連れていったら気に入ったようだ。ついでに音楽的価値観も破壊される(またか……)。
「ノイズとかヘヴィロックは疲れたのでプログレを聴いてみる」と言って探してきたのがRuins(日本のユニット。プログレの影響下にあるのでプログレと言えなくもないが、非常に暴力的、と言うかうるさくて訳が分からないことをしている)を引いてくる。
この件に関しては、私は悪くない。
「自分が探しているインダストリアル・サウンドがなかなか見つからない」と言っているのでCold Meat Industryレーベル(独自の暗黒美学を貫いていたスウェーデンのノイズ・インダストリアル・ダークアンビエント系インディレーベル)を紹介したら興味を持つ。かなりマイナーなレーベルなので、検索しても有益な情報はほとんど手に入らず、泣きを見る。
Diamanda Galasとは、80年代から活躍する前衛的女性ボイスパフォーマーで、「あまりの迫力に客が途中で逃げた」「コンサートが終わってもしばらく立ち上がれなかった」「発狂したと勘違いされて救急車を呼ばれた」などの逸話を持つ。
常にタブーに切り込んでいく社会的スタンスから、アイツは敬意を込めて「Diasmanda Galasはロック」と言っている。
アイツの場合、最初に夢中になった音楽がALI PROJECTという、不幸なんだか英才教育なんだか分からないスタートを切っている(ALI PROJECTは単なるアニソン歌手と言うにはあまりにも変なユニットである)。次にJ-Rockの方へ行きそうになったが、実際に進んだのはボカロであった。ボカロ界隈も掘っていくとほとんど全てと言ってもいいくらいの幅広いジャンルを扱っており、全ジャンル対応型の素養はここで完成を見たと言っていい。
それでも私と会わなければマシだったのかも知れないが、私が音楽を聴かせるとだいたい良い反応が返ってくるので、面白がって色々と吹き込んでいる最中である。もともとボーカルと歌詞をメインに聴いていたのをオーディオ沼に引き入れて曲全体が聴ける耳にしてしまったり、アンダーグラウンドの方面に引き入れてしまったり。お気の毒さま。
私もアイツからボカロだの藤井風だのキタニタツヤだのを教えられて、今はこうしてキタニメインのサイトまでやっているのだから、お互い様という事にしておいていただきたい。
なお、アイツも私も音楽に対してはかなり貪欲である。
アイツ:ぼくは被害者です。
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