身体的ダメージ有り
俺:心臓に負担がかかった。
アイツ:脳味噌を揺さぶられた。
この記事はライブレポートである。
拷問を受けに行ったのではない。
一生モンのネタになるから来い
ネタでアイツに聴かせたMerzbowがド真ん中に刺さったようだ。困ったな、これ以上激しいノイズニュージシャンのストックは持ち合わせていない。
Merzbowとは日本のノイズユニットで、世界的に見ても大御所と言ってよい。ここに辿り着くまでにはいくつかの段階を踏む必要があると考えていたのだが、過程を全部すっとばして究極を聴かせたらハマったらしくMerzbowばかり聴き出した。そこで今がチャンスと考え、「ノイズを楽しめる」など調子ぶっこいてるアイツを爆音で定評があるライブに連れていくことにした。私も初体験なのでMerzbowが実際どういった音を出しているのか分からないが、知った風な口を利いておく。
俺:Merzbowのライブは凄いぞ。爆員だぞ。おお、次のライブは渋谷で、入場料無料のフリーライブ、しかもワンマンではないか。ん?会場の機材入れ替えがあって、ここの今の音を聴けるのはこれが最後だと?っつーかMerzbowの中の人ってもう60代後半じゃねぇか。今ここで行くしかない。
アイツ:ごめんノイズ漁ってたから聞いてなかった。
俺:じゃあ無意識に返事してたんだな。お前さんはいま行くと言った。1月6日は空けておけ。
アイツ:1月6日に何があるん?
俺:Merzbowのライブがあると言ったではないか。しかも条件がこれこれこうだ。行くべきだ。いや、行かなければならない。
アイツ:いきなり爆音はちょっと……。
俺:うるせぇ。俺がいつもSunn O)))のライブのネタをおもしろおかしく話してるだろ。ああいうのは一生モンのネタになるんだよ。
アイツ:いきなりコアすぎだろ!今まで行ったライブなんて平沢進とかキタニタツヤとかなんd
俺:黙らっしゃい。ライブを体験せずにMerzbow知った気になってんじゃねぇ。……よし1月6日になったな?待ち合わせ場所はアソコだ。まずは準備をして家を出ろ。家を出たらどういうライブか心配することを始めてもよい。
と、アイツを強引に誘導してライブ会場へ拉致することに成功した。
開演前
当日は雨だった。
客層は?
ノイズを見にくる客層はどんな感じなのだろうか。これは本当に千差万別で、「こういう人達が来る」と答えられないのである。逆に言うと、どんな客が来てもおかしくない。もしノイズのライブに興味があっても客がどんな感じか分からない人は安心して来ていただきたい。
さすがにライブ前だからと言ってはしゃぎすぎると、後でXのネタにされる可能性があるが、そんな程度である。
会場側の客捌きは赤点
フリーライブという事で、チケットは当日券のみ。物販もあるという。どれだけの人数が集まるのか見当がつかない。そこで少し早く会場の渋谷WWW前に行った。
会場側による整列案内ナシ。一応、客側で自主的に並んでいたが、会場からスタッフが出てきて「そちらは会場の敷地ではありませんのでー!」的なテンプレを言って列を解散させ、引っ込んでいった。
もう一度行列ができた所でさらに解散させられた。
3度目にようやくスタッフが整列の音頭を取る。いや、イベントの状況を考えたらこうなる事は予想できたのではないか?早めに来て雨に打たれていた組に対するサポートもない。物販は早々に売り切れた商品もあったそうだ。スタッフ一人を出して対応させるなり、整理券を出すなりの対策はしておくべきだった。
会場前方が空いている
普通のライブ会場は一番前から埋まっていくものだが、この日は前が空いていた。アレイスピーカーからの音を堪能したい派が集まったのか、はたまた我々のように怖いもの見たさが多かったのか。
演奏開始
想像した通りの爆音だった。
音が物理的に叩き付けられる
爆音ライブは、音が物理現象を伴って襲ってくる。
具体的には、服の裾が揺れるなど普通。音の振動が服と皮膚を貫通して内臓を揺さぶる。
冒頭で「心臓が」とか「脳味噌が」とか書いたのは誇張ではない。
NO REFUGE
渋谷WWWの見取り図を見ると、ホール以外のスペースもあるようで、危険な状態になったらそこに避難すればいい。とアイツに言い聞かせておいたが、逃げ場に行くことは不可能だった。
ここで逃げたら負けと意地になったそうだが、出入口まで人がいっぱいで、押し分けて離脱することも難しい状況となっていた。
二部構成
鍵盤っぽい音から速やかにノイズが炸裂した。こういう爆音ライブに行くと後悔する。こんな環境に自ら飛び込んでいく奴はマゾだという思考が支配的になる。なお喉元を過ぎたらまた行きたくなるのが常。半月もしたらもう次のライブ予定をチェックし始める。
もう勘弁して下さいと思っていたところで、演奏が止んだ。休憩を入れてくれるのか有り難いと思ったのも一瞬で、機材にケーブルを挿しはじめた。その姿を見てアイツは怖くなったそうだが、セッティングが終わってから出てきた音はセッティング前より大きかった。
耳栓を外すのは自己責任で
アイツは事前に耳栓を用意して持ってきていた。この手のライブは初めてだと言うし、私自身は正面から受けて立つタイプなので耳栓をしないが、それを誰かに押しつけようとも思わない。ご自由にどうぞ。
ところがアイツは演奏の途中で耳栓を外したらしい。好奇心から耳栓を外したら聞こえてこなかった音が聞こえて、再び付けるのが躊躇われたという。前半部分ですでに外しており、本番と言ってもよい後半はノー耳栓で挑んだとのこと。
そんな事をしたら2~3日ほど耳鳴りが止まらないぞ。
客は暴れるの?
暴れない。
たまにトランス状態になったのか、この手の音が大好きなのか、手を挙げたり首を振ったりするのが数名確認できた程度である。
視覚的には?
ステージの背後はもちろん、ホールの左右、天井にも映像が映し出されていた。内容は鳥っぽいものが変形するみたいなCG。
そのほか、照明器具やプロジェクターの光線がよく見えた。場合によっては客を直撃することも。後半になるとストロボも多用される。目を開けたらピカピカ、目を閉じたらいよいよ音の世界に引きずり込まれる。
視覚的にも逃げ場がない。
終演後
我々は数日間の耳鳴りに苛まれた。
アイツはいよいよノイズにハマっていった。楽しめたらしい。
俺:今度は3月19日に小岩でやるらしいぞ
アイツ:爆音はワンシーズンに1回くらいでいい……。
点数
10点満点で言うと、「たいへん満足しましたありがとうございます」
その後
TOOBOEのライブに行ったアイツはすっかりTOOBOEにハマり、今はTOOBOEばかり聴いている。
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